秋は抜け毛のシーズンなのか

季節の流れを見ると、春は成長が始まる時期、秋は成長が止まる時期というイメージがあります。植物は四季の移り変わりを反映した変化をしていくものですが、そのイメージがあってか毛髪も秋は抜ける季節と思われています。ペットの場合には、秋になると抜け毛が増えて掃除が大変になります。

人間の毛髪も同じことなのか、それとも季節に関係がないのかということは以前から論議されてきたことです。 確かに人間の髪も動物と同じように体温保持のために生まれたものです。同じような性質が残っていても可笑しくありません。私は、自毛植毛手術で移植した毛髪がどのなるのかも気になるところです。  

夏のダメージが現れる季節

  毛髪にはヘアサイクルがあって、生えて、成長して、成長が止まり、抜ける、抜けたあとに時期を置いて生えてくるという周期リズムがあります。毛根が死んでしなければ、このヘアサイクルを繰り返すので、1日に80〜100本の毛髪が抜けても、それだけの本数が生えてくるので慌てないで済むということになっています。

日本人の場合には毛髪は約10万本もあるので、たまたま抜ける本数が多いときがあっても、それだけ次に生えてくるので問題はありません。 とはいっても、これは若いときの話で、40歳を過ぎると男性は男性ホルモンの変化からヘアサイクルの成長期が短くなります。通常の男性の成長期は2〜6年と個人差がありますが、年齢を重ねて成長期が短くなると抜け毛が増えるだけでなく、抜けなかったとしても細毛の人が増えてきます。本数に変わりがなくても、細くなると薄く見えるようになります。

女性の場合は女性ホルモンのおかげで成長期は男性よりも1〜2年は長いので、薄毛にはなりにくいといっても、やはり45歳を過ぎると女性ホルモンの分泌量が減って成長期が短くなっていきます。
さて、秋には抜け毛が多くなるのかということについてですが、イギリスの研究報告では成人男性(18〜39歳)の抜け毛の数は8〜10月が最も多くなり、抜け毛が少ない冬に比べると2倍ほどにもなっていたといいます。これは落ち葉の季節の秋が、人間の毛髪にも影響しているということではなくて、夏のダメージケアができていなかった結果のようです。
夏には紫外線の量が多くなるだけでなく、頭皮にも熱が蓄積しやすく、これが毛細血管にダメージを与えます。 紫外線は活性酸素を発生させて、血管の細胞を傷つけていきます。特に傷つきやすいのが毛細血管で、傷つくほど血流が低下して、毛母細胞に運ばれる栄養素が少なくなります。特に栄養素が多く必要なのは成長期の毛母細胞なので、成長が不足して、抜けるまでの期間が短くなります。夏に紫外線を多く浴びた人ほど、秋には抜けやすくなるということです。

秋になると涼しくなって睡眠も充分にとれるようになります。これは毛髪の成長にはメリットです。というのは、毛髪の成長は1日中ずっと同じ調子ではなくて、睡眠中に特に成長しています。夏場は暑さのために寝苦しい時間が長く、睡眠時間を確保していても、深い眠りが得られていない睡眠の質が低い状態になると、毛細血管の血流が低下して成長期が短くなることがあります。その結果が出るのが秋だということです。  

薄毛が気になりだした年齢ときっかけ

秋に抜け毛が増えるということは、それだけ薄毛になりやすい時期であり、また薄毛に気づきやすい時期だということができます。毛髪と頭皮のケアは気になったときから始めるべきですが、年齢的には何歳のときに気になったのかというのは気になることです。 この年齢が、まだだという人は、季節による毛髪の変化を特に気にするようにしてほしいところです。

また、すでに過ぎているという人は手遅れにならないように早めにケアを始めてほしいところです。 その薄毛が気になりだした年齢は、「2020年薄毛調査報告書」(リクルートライフスタイル/ホットペーパービューティーアカデミー)によると、男性の平均は38.1歳、女性の平均は41.9歳となっています。この年齢は継続調査の結果を見ると遅くなりつつあります。これは毛髪の健康寿命が延びたということよりも、単に気づくのが遅れたということにようです。
薄毛が気になりだしたきっかけは、男性の場合には「鏡を見ていたとき」が33.1%、「家族から」が17.4%、「友人・知人から」が11.8%、「自分の写っている写真を見たとき」が10.5%、「抜け毛の量を見たとき」が9.2%となっています。家族というのは配偶者、親、兄弟姉妹などを指しています。

女性の場合には「鏡を見ていたとき」が28.7%、「家族から」が19.2%、「抜け毛の量を見たとき」が14.7%、「自分の写っている写真を見たとき」が8.8%、「友人・知人から」が8.0%となっています。毎日丹念にブラッシングする女性のほうが抜け毛に気づきやすいようです。

周囲からの指摘に気づく人が増えていますが、スマホでの対話やリモート会議が増えた現在は、画面を通して顔と髪が注目されるので、指摘の機会が増えるのかもしれません。そのことを意識して、鏡を見る機会が増えたという声も、よく聞かれることです。   薄毛が気になったからと言ってすぐに自毛植毛手術を受けるというわけではありませんが、日頃のケアは、今まで通りではなく自分に合ったケアを探してみてはいかがでしょうか。  

参考)

季節と抜け毛
http://www.aga-news.jp/secure/about_hair/index.xhtml  

2020年薄毛調査報告書
http://hba.beauty.hotpepper.jp/wp/wp-content/uploads/2020/09/data_usuge_20200910.pdf

 

 

 親和クリニックの公式サイトはこちら