脂肪が多く含まれる食事を続けていると薄毛になっていく仕組みについて、東京医科歯科大学の研究チームが明らかにしたことを受けて、では、どうやって実際に脂肪の蓄積を減らすかということを考えていきたいと思います。
見える脂肪より見えない脂肪に注意
脂肪は肉に多く含まれていて、脂身を切り落として食べなければ脂肪が減らせると単純に考えてしまいがちです。もちろん、脂身を減らすのは肥満を防ぐにはよいことですが、脂肪が固まっている部位なら簡単に切り落とすことができます。ところが、霜降りのように細かく脂肪が入っていると、これを全部カットするわけにはいきません。
では、脂肪が見えない状態の肉なら安心できるのかというと、肉は赤身の部分にも脂肪が含まれています。簡単に切り落とせる脂肪は「見える脂肪」で、問題になるのは「見えない脂肪」のほうです。脂肪が見えない肉は脂肪が含まれていないわけではなくて、脂肪の量は少ないものの、ちゃんと含まれています。見えないからといって安心して食べていると、結局は脂肪を多く食べていることになります。
「見えない脂肪」には、調理で使われる脂肪もあります。よく使われるのはラードとヘットです。ラードは豚油で、ヘットは牛脂です。脂肪の最小単位の脂肪酸には、動物性食品に多い飽和脂肪酸が多く含まれています。もう一つの不飽和脂肪は魚や植物に含まれる脂肪です。飽和脂肪酸は血液をドロドロにする性質があり、不飽和脂肪酸は血液をサラサラにする性質があります。ヘットは特に飽和脂肪酸が多く含まれていて、ラードのほうは飽和脂肪酸がヘットに比べて少なく、その少ない分だけ不飽和脂肪酸が含まれています。
ということで、同じ脂身であっても、まだラードを調理で使ったほうが健康面ではよいことになります。見えない脂肪として赤身の中に含まれている脂肪酸も、牛肉よりも豚肉のほうが少なくなっています。
魚の脂肪酸は不飽和脂肪酸で、肉を食べるよりも魚を食べたほうが健康によくて、太りにくいようなイメージがあるかもしれません。肉と魚の脂肪は飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の違いはあっても、太る原因ということで見ていくと、同じだけの量の脂肪を摂れば同じように太ります。太るというのは、食事で摂ったエネルギー量に比べて体を動かすことによって消費されるエネルギー量のほうが少なくて、余分となったエネルギー源が肝臓で脂肪酸に合成されて、中性脂肪となって脂肪細胞の中に蓄積されていくことです。太るかどうかは、エネルギー量のバランスにかかっています。
肉の脂肪も魚の脂肪もエネルギー量は1gあたり約9kcal(キロカロリー)となっています。油が乗った魚は、とてもおいしいものですが、油が多い魚はおいしさというメリットの反面、太りやすいというデメリットもあるのです。調理に使われる植物油も、エネルギー量は同じです。これが、どれくらい多いのかを知るために糖質とたんぱく質で比較すると、両方とも1gあたり約4kcalです。これに比べて、同じ重量なら脂肪は2.25倍も多いので、やはり食べすぎると太ってしまうのは仕方がないことです。
脂肪を食べるタイミングで蓄積量が変わる
脂肪が多く含まれたものを食べれば、それだけ摂取エネルギー量が増えて、太ってしまうと書いておいて、これから「そうとも限らない」という話をします。今まで書いたことがウソだったということではなくて、脂肪を摂るタイミングによって脂肪細胞の中にたまっていく中性脂肪の量が変化するという話です。ということは、脂肪が多く含まれた肉や魚を、いつ食べるかによって太り方が違ってくるということです。
余分に食べたものは、糖質もたんぱく質も脂質も肝臓で脂肪酸に合成されるわけですが、脂肪酸になるときに必要になるエネルギー量が違ってきます。脂質が脂肪酸に変化するときには同じようなものに変わることから、それほど多くのエネルギーは必要にはなりません。摂ったエネルギー量の3%くらいとなっています。100kcalの脂肪が余ったとすると97kcalが蓄積されることになります。これに対して糖質が脂肪酸に変化するときに使われるのは20%ほどで、たんぱく質の場合には23%ほどとなっています。
これだけの差があるわけですが、昼間に脂肪酸が多く作られても、活動のために使うことができます。ところが、夕食で脂肪を多く摂った場合には、それ以降の活動量が少ないので、脂肪細胞に蓄積される中性脂肪が多くなってしまいます。
夕食で脂肪を多く摂ると太りやすい理由がもう一つあります。糖質に含まれているブドウ糖は膵臓を刺激してインスリンというホルモンを分泌させます。インスリンはブドウ糖を細胞に取り込んで使わせる役割が一般に知られています。そのほかにインスリンには肝臓での脂肪と中性脂肪の合成を進めると同時に、中性脂肪が脂肪細胞の中に蓄積されるのを促進する役割もあります。
インスリンは、自律神経の副交感神経が盛んに働いているときに多く分泌されます。朝食と昼食を食べているときには交感神経が盛んな状態となっていますが、夕食を食べているときには副交感神経が盛んに働いているので、特にインスリンが多く分泌されています。そのために、脂肪合成が進みやすいので、脂肪が多く含まれている肉や魚を多く食べると太ることにつながるのです。
太るということは、脂肪がエネルギーとして使われなかったということですが、毛髪の再生にもエネルギーは必要です。太った分だけエネルギーにならなかったということで、毛母細胞や毛包幹細胞がエネルギー不足になっていたのでは、再生が進みにくくなり、それだけ薄毛に近づいていくということになります。活動量を増やすのは大切なことです。
自毛植毛は、移植する自分の毛髪が元気な状態であることが大切で、脂肪の摂りすぎによって毛髪の成長が遅れるようでは、移植後の毛髪の状態にも影響を与えることになります。毛髪を全体的に健康な状態にするためにも、脂肪の摂り方には注意が必要です。
脂肪酸の種類
https://www.j-oil.com/oil/type/
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