マスク生活は毛髪に影響するのか

マスクは感染防止の最大の方法という意識の高まりから、とにかくマスクをする時間が増えています。感染予防というマスクのプラス面だけでなく、マイナス面も指摘されています。それはマスクをつけることによって、呼吸による酸素の取り込みが減ってしまうことです

マスクで酸素が減って二酸化炭素が増えた

国の感染防止の呼びかけでも、常にマスクをするのではなく、人通りが少なくて、2mのソーシャルディスタンス(フィジカルディスタンス)が保たれている条件なら、マスクをしなくてよいということが示されています。

外出をして歩くことは酸素を多く取り込んで、心肺機能も血流も高めてくれます。多くの酸素を取り込むことで脂肪の燃焼効果が高まり、認知機能の維持にもつながることから太りやすい中高年も、認知機能が気になる高齢者まで、マスクをしないで歩く機会を増やしたいと思うはずです。
マスクをしないで呼吸をしている状態では、吸い込んでいる酸素濃度は約21%とされます。吐き出すときには二酸化炭素も含まれているので約15%の酸素濃度となっています。この5%の差が非常に大きくて、16%の酸素濃度では酸欠状態になってしまいます。
マスクをつけることによって、吐き出す酸素濃度のまま吸い込むわけではなくて、マスクの外側から入ってくる酸素もあるので酸欠状態になるわけではありません。
しかし、マスクをつけたままだと、本来なら完全に吐き出されるはずの二酸化炭素がマスクの内側に残って、再び吸い込まれることになります。つまり、酸素濃度が低い状態の酸素を取り込んでいるのです。
酸素は肺の中で赤血球に取り込まれて、血液を通過して全身に運ばれていきます。酸素が結合するのは赤血球のヘモグロビンというタンパク質の鉄ですが、呼吸によって取り込まれる酸素が減れば、結合する酸素が減り、赤血球によって運ばれる酸素も減ります。特に届きにくい毛細血管の酸素は減るわけですが、毛母細胞も毛細血管の端にあって、酸素の供給量が減ったときには、すぐに影響を受けることになります。
マスクをつけることによって毛髪の成長が妨げられる原因は、マスクそのものよりも外出の機会が減るための運動不足、室内にいる時間が長くなることによって食べすぎることの血糖値や中性脂肪値の上昇などが主にあげられていますが、マスクをつけることによって体内に取り込まれる酸素の量が減っていることから、毛母細胞に必要な酸素が届けられないことも大きく関係しているのです。
マスクをつけての生活が長くなるにつれて薄毛が気になっている人は、できるだけマスクをつけないで多くの酸素を取り込むウォーキングの機会を増やすようにするか、家庭内での運動も心がけるようにすることです。

糖尿病になると毛髪にも影響が出る

新型コロナウイルスの感染では、基礎疾患がある人の重症化が懸念されています。中でも糖尿病は重症化リスクが高くなっています。その理由として、高血糖状態が長く続くことによって血管の老化が早まることがあげられています。特に老化が進みやすいのは毛細血管で、糖尿病の三大合併症の網膜症、腎症、神経障害は、どれも毛細血管が密集している部分で起こっています。
糖尿病は全身の毛細血管に運ばれる酸素の量が減ることで、全身の機能を低下させることになりますが、これは血管の老化ばかりが原因ではありません。糖尿病になるとヘモグロビンA1cの値が高くなります。ヘモグロビンA1cは赤血球のヘモグロビンとブドウ糖が結合したもので、血糖値が高い状態が長く続くと結合量が増えるので、ヘモグロビンA1c値が高くなります。赤血球の寿命は4か月ほどとされているので、ヘモグロビンA1c値から1〜2か月の血糖値の状態を知ることができます。
ヘモグロビンは酸素を結合させるのに対してヘモグロビンA1cも酸素を結合させることはできます。違っているのは結合した酸素を離す能力で、ヘモグロビンは必要なところで酸素を離して送り届けることができるのに、ヘモグロビンA1cは離すことができないので、結果として酸素を送り届けられないことになります。
さらに困ったことに、血液中のブドウ糖が多くなると、赤血球がベトベトしたような状態になって、2個の赤血球がくっついた状態で運ばれていきます。赤血球の直径は10μmですが、毛細血管の直径は8μmで、赤血球はつぶれるようにして通過していきます。2個の赤血球がくっつくと毛細血管を通過することができなくなるので、さらに酸素供給量が減ることになります。
このことから糖尿病になると酸素が届けにくくなり、その影響は毛母細胞のような毛細血管の先にある細胞に現れることになります。
コロナ禍の外出自粛のために運動量が減り、食べすぎから血糖値が上昇するなど糖尿病になる人、悪化する人が増える結果となっています。
さまざまな薄毛対策の方法がある中で、薄毛の部分の毛母細胞に関係する方法は、どうしても酸素の供給量が関係しているために、マスクをつけての生活が続く限りは、その方法も悪影響を受けることになります。自毛植毛は元気な毛髪の移植であることから、酸素不足の影響を受けにくくなっています。
もちろんマスク生活が長期にわたる場合には、影響がないとは言えないので、できるだけマスクをつけない状態での運動は軽いものであっても取り入れるようにはしてほしいところです。

ヘモグロビンA1c
http://www.ncvc.go.jp/hospital/section/ld/endocrinology/hba1c.html